久保教授への委嘱作品(吹奏楽曲)を初演 松陽高等学校定期演奏会

 5月3日に宝山ホール(鹿児島県文化センター)で開催された「鹿児島県立松陽高等学校第38回定期演奏会」において、同高校から久保禎音楽学科教授に委嘱された吹奏楽作品〈想光楽(そうこうがく)-フルートと吹奏楽のための-〉が初演されました。演奏にあたったのは、フルート独奏:満丸彬人、吹奏楽:松陽高等学校吹奏楽部、指揮:立石純也(同高校教諭)の皆さん。満丸さんの現代奏法や特殊技法を含む高度な技巧と豊かな表現力、立石先生の見事な解釈と統率力、そして、吹奏楽部員の音楽にかけるひたむきな想いが直に伝わり、会場中から盛んな拍手が贈られました。

 満丸さんは同高校音楽科第12期生で、東京藝術大学を経て同大学院修了後、エコール・ノルマル音楽院(フランス)演奏課程ディプロムを取得。数々の国内・国際音楽コンクールで受賞を重ね、現在は名古屋フィルハーモニー交響楽団フルート奏者を務めています。プロ奏者として精力的に活躍する満丸さんと母校部員たちとの夢の競演を実現するために、久保教授へ新作の作曲が打診され快諾。今回の委嘱初演の運びになりました。

 例年、吹奏楽コンクール等で優秀な成績を収めているだけあって、駆けつけた聴衆の方々は上質で迫力のある演奏に感銘を覚えたようです。初演に立ち会った音楽学科卒業生の松田郁美さん(コンピュータ音楽専攻)は「楽器間の掛け合いや構成が彩り豊かで、あっという間に時が過ぎていった。手拍子・足拍子の瞬間に、客席の空気が舞台に吸い寄せられるように変わったのが印象的だった」と興奮気味に話していました。久保教授は「コロナ禍が続く中、音楽や表現の力を信じ、世界の平安を願う皆さんとともに心の底から想いを奏でようと作曲した。疫病退散、無病息災、記憶の伝授を希う〈疱瘡(ほうそう)踊り〉や〈お伊勢講〉、生命の源であるニライカナイ伝承を思わせる〈琉球人踊り〉など、南薩地方の郷土芸能を素材とし、それらを自在に扱いながら音楽を創っていった。貴重な機会に感謝するとともに、新型コロナの収束を心から願っている」と語ってくれました。